剛体球の慣性モーメント(3次元極座標のJacobianからの直感的導出)
はじめに
物体の運動は主に二つに分けることができる.並進運動と回転運動だ.
並進運動において「運動のしにくさ」=「動かしにくさ」=「質量」であったわけだが,回転運動における「回転させにくさ」を「慣性モーメント」という.(正直わかりづらいので「回転質量」とかにしてほしかった.)
ここで慣性モーメントの定義(式)は以下のようになる.
$$I=\int{L}^2 {\rm{d}}m$$
ここで\(L\)は回転軸からの距離(重要:勘違いしがちだが,極座標系における\(r\)とは別物.)
今回は慣性モーメント系の問題で頻出かつイメージのつかみづらい剛体球の慣性モーメントを導出する.
剛体球の慣性モーメントを導出する方法はいくつかあるが,今回は最も直感的な解き方をする.
まず3次元極座標系において\( \boldsymbol{r}=(r,\theta,\phi) \)の位置にある体積素片の微小モーメントを計算し,それを全空間で足し合わせ,全モーメントを計算する.
三次元極座標系におけるJacobianを用いた導出
剛体球の質量を\(m\),半径を\(R\)とする.
ここで慣性モーメントの定義より,
$$I=\int{L}^2 {\rm{d}}m $$
剛体球の微小質量\({\rm{d}}m\)は\(\rho\)を密度とすれば
$${\rm{d}}m=\rho{\rm{d}}V$$
であり,\(\rho\)は
\begin{align}
\rho&=\frac{m}{V} \\
&=\frac{3m}{4\pi{R}^3}
\end{align}
とできる.
三次元極座標におけるJacobian(微小体積\({\rm{d}}V\))は
$${\rm{d}}V=r^2{\rm{sin}}\theta{\rm{d}}r{\rm{d}\phi}{\rm{d}\theta}$$
であるから,\({\rm{d}}m\)は
$${\rm{d}}m=\frac{3m}{4\pi{R}^3}r^2{\rm{sin}}\theta{\rm{d}}r{\rm{d}\phi}{\rm{d}\theta}$$
とできる.
また,回転軸と微小体積の距離\(L\)は
$$L=r{\rm{sin}}\theta$$
である(注1)から,慣性モーメント\(I\)は
\begin{align}
I&=\int{L^2}{\rm{d}}m \\
&=\int(r{\rm{sin}}\theta)^2\frac{3m}{4\pi{R}^3}r^2{\rm{sin}}\theta{\rm{d}}r{\rm{d}\phi}{\rm{d}\theta} \\
&={\int^R_0}{\int^{2\pi}_0}{\int^{\pi}_0}(r{\rm{sin}}\theta)^2\frac{3m}{4\pi{R}^3}r^2{\rm{sin}}\theta{\rm{d}}r{\rm{d}\phi}{\rm{d}\theta} \\
&=\frac{3m}{4\pi{R}^3}{\int^R_0}{\int^{2\pi}_0}{\int^{\pi}_0}r^4{{\rm{sin}}^3\theta}{\rm{d}}r{\rm{d}\phi}{\rm{d}\theta} \\
&=\frac{3m}{4\pi{R}^3}{\frac{2\pi R^5}{5}}{\int^{\pi}_0}{{\rm{sin}}^3\theta}{\rm{d}\theta} \\
&=\frac{3}{10}mR^2{\int^{\pi}_0}{{\rm{sin}}^3\theta}{\rm{d}\theta}
\end{align}
ここで置換積分を用いて\({\rm{sin}^3}\theta\)の積分を実行すると,
\begin{align}
I&=\frac{3}{10}mR^2\cdot\frac{4}{3}\\
&=\frac{2}{5}mR^2
\end{align}
と導出できる.
総評
剛体球のモーメントの導出においてこの方法は決して平易な部類ではない.しかし,最も直感的にモーメントを求めることのできる方法だと私は思っている.
剛体球のモーメント問題は大学院入試でも頻出であり,学習しておいて損はないであろう.
間違いなど発見された方はコメントください.
注釈
注1:距離は\(r{\rm{cos}}\theta\)では??と思った人へ,3次元極座標の定義を思い出してほしい.紛らわしいことに,\(\phi\)は\(x-y\)平面内の角度であるのに対し,\(\theta\)は\(z\)軸を基準とした角度なのだ...!Googleで「三次元極座標」と検索した際の画像を見ると直感的なイメージがつかめるだろう.
