物性物理学実験 理論

電気伝導度測定

概要

電気伝導度測定は物性測定におけるもっとも基礎的な測定であるといえる。電気伝導度は物質固有の値であるため、電気伝導度測定を行うことにより物性の評価を行うことができる。

電気伝導度

電気伝導度とは電気の通りやすさを表す物理量である。
長さ\(l\)、断面積\(S\)の導体に電場\(E\)を印加したとき、電流密度\(J\)の電流が流れたとする。このとき、電流密度\(J\)は印加した電場\(E\)に比例する。
$$J={\sigma}E\tag{1}$$
この時の比例係数が電気伝導度である。
長さ\(l\)の導体に電場\(E\)を印加すると両端にかかる電圧\(V\)は
$$V=El\tag{2}$$
である。また、導体の断面積は\(S\)であるから、導体を流れる電流\(I\)を電流密度\(J\)で表せば
$$I=JS\tag{3}$$
となる。(2),(3)をOhmの法則
$$V=RI\tag{4}$$
に代入すれば
$$J=\frac{1}{R}\cdot\frac{l}{S}E\tag{5}$$
を得ることができる。(1)と見比べれば電気伝導度\(\sigma\)は
$$\sigma=\frac{1}{R}\cdot\frac{l}{S}\tag{6}$$
とあらわすことができる。

4端子法

電気伝導度を測定したい試料の抵抗が接触抵抗を無視できない小ささであるときに、接触抵抗の影響を無くして試料の抵抗を測定する手法が4端子法である。
電圧計の抵抗の大きさが試料の抵抗の大きさよりも十分に大きいとしたとき、電圧計に電流は流れない。よって電圧計と試料の接触点には電流が流れず、接触抵抗を0とみなすことができる。

ダイオード・トランジスタ

概要

ダイオードとトランジスタは半導体の接合によって作られる半導体素子である。ダイオードは回路内において整流作用を持つ。また、トランジスタは回路のオンオフを切り替えるスイッチング作用、信号を増幅させる増幅作用をもつ。

ダイオード(pn接合)

ダイオードはpn接合によって作られる。電子をキャリアとするp型半導体とn型半導体を接合させるとキャリア密度の傾きを解消するようにpからnに拡散電流が流れる。キャリア密度が一様になったとき、両半導体のFermi準位を同一とするようにバンド図が形成され、pn接合間に空乏層が生まれる。ここでpn接合に電圧を加えることを考える。
p型半導体に正極、n型半導体に負極を接続したとする。するとFermi準位がバンドの傾きを抑制する向きに変化し、電流が流れる。これを順方向バイアスという。
反対に、n型半導体に正極、p型半導体に負極を接続したとすると、Fermi準位はバンドの傾きを大きくするように変化し、電流が流れない。これを逆方向バイアスという。

トランジスタ(pnp接合・npn接合)

npn接合について、電圧を加えていないバンド図を考える。電圧をかけていないのでFermi準位が同一となるようにバンド図が形成される。このとき左から順にE(エミッタ)、B(ベース)、C(コレクタ)担っていることに留意する。Eに順方向バイアス、Cに逆方向バイアスをかけるとEのFermi準位は上昇し、CのFermi準位は下降する。この時、E→Bへ電子が流入し、一部の電子がBのホールと結合し、ベース電流を構成する。結合しなかった電子はBを通過してFermi準位の低いCに電子が供給される。これによりC→Eへのコレクタ電流が形成される。
pnp接合に関してもnpn接合と同様の原理である。ただしpnp接合に関してはキャリアがホールであるために電流の向きがE→Cとなる。

光電子放出

概要

光電子放出とは、金属表面に光(電磁波)を照射すると金属表面から電子が飛び出してくる現象のことを言う。光電子放出の実験を行うことでPlanck定数を測定することができる。

光電子放出

光子のエネルギー\(E\)は
$$E=h\nu$$
で表される。ここで光の振動数\(\nu\)に関して
$$c=\nu\lambda$$
の関係式を用いれば
$$E=\frac{hc}{\lambda}$$
と記述できる。
このとき、仕事関数\(W\)を金属表面におけるエネルギー損失と考えると、放出された電子の持つエネルギーはエネルギー保存により、
$$E=h\nu-W$$
となる。ここで光電管内の電圧を\(V\)とすれば
$$E=eV$$
であるから、上の式は
$$h\nu=eV+W$$
と変形できる。これにより、\(\nu-V\)プロットをとることにより、Planck定数を傾きとして求めることができる。

仕事関数

仕事関数とは、物質から電子一つを無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーのことである。

参考

このページで光電効果の実験が行える。とても面白い。

X線回折

概要

X線回折とは、結晶構造解析の一つの手段である。X線回折を行うことによって結晶構造を解析することができる。結晶にX線を照射するとX線が結晶内電子によって散乱される。散乱したX線はBragg条件(Laue条件)に従って回折を起こし、その回折ピークを解析することによって結晶の面間隔を知ることができ、そこから格子定数を求めることができる。また、指数付けを行うことにより、結晶構造を知ることができる。

X線の発生と散乱

フィラメントに電流を流すと熱電子が放出される。この電子を電場によって加速させ、金属にぶちあてるとX線が発生する。ここで発生するX線は制動X線と特性X線がある。制動X線は熱電子が結晶内においてCoulomb力によって軌道が曲げられた際に放出される電磁波である。特性X線は金属のK殻電子が加速された熱電子によって弾き飛ばされ、その電子の穴に外殻から電子が遷移してくる際に軌道間のエネルギー差を電磁波として放出したものである。
X線は電磁波であるために、原子核の電荷と相互作用して散乱する。この散乱はThomson散乱と呼ばれ、散乱前後でX線の波長は変化しない。

Laue条件・Bragg条件

X線の回折が起きる条件はLaue条件またはBragg条件で表される。これらの条件は物理的に等価である。
散乱ベクトルを\(\boldsymbol{k-k_0\equiv{K}}\)、逆光子ベクトル\(\boldsymbol{G}_{hkl}\)とするとLaue条件は
$$\boldsymbol{K}=\boldsymbol{G}_{hkl}$$
と記述される。
また、Bragg条件は以下の式で表される。
$$2d{\rm{sin}}\theta=n\lambda$$
この条件が満たされるとき、X線は回折を起こし、ピークを観測できる。

逆光子ベクトル

逆光子ベクトルとは、指数\(h,k,l\)によって指定される格子内面ベクトルと等価なベクトルである。

核磁気共鳴

概要

核磁気共鳴とは、原子の持つ磁気モーメントの共鳴現象を観測することで物性を測定する手法である。たとえば、イオンが溶け込んだ液体を解析することでどのイオンに磁性があるかを測定することができる。

Zeeman分裂

磁場のない系において、エネルギーの軌道は縮退している。そこに磁場を印加することでエネルギーの縮退が解け、エネルギー準位は分裂する。これをZeeman分裂という。磁場と平行な向きのスピンは安定化し、反平行なスピンは不安定化する。

電磁波の吸収

Zeeman分裂によるエネルギー準位の幅と同じだけのエネルギーを持つ電磁波を入射することにより、磁場と平行の向きの磁気モーメントはエネルギーを吸収してスピンを反転させ、高いエネルギー状態に遷移する。これを磁気共鳴と呼ぶ。この時、共鳴条件は入射電磁波の各振動数を\(\omega\)、磁気回転比を\(\gamma\)とすると
$$\omega=\gamma{H}$$
となる。

核磁気緩和

Zeeman分裂によって生じた高エネルギー準位への遷移は外場が磁場のみである場合ならば固有状態であり、高エネルギー準位に遷移したままになる。
しかしながら、磁性体中においては周りの電子による磁気モーメントによる磁場も感じることになる。この時、核スピンは摂動ハミルトニアンを作用されることとなり、固有状態が変化する。よって磁場による高エネルギー遷移は有限の寿命を持ち、有限時間後に元のエネルギー準位へと遷移する。これを核磁気緩和という。物質に磁性がある場合、電子にスピンによる摂動は大きくなり緩和時間が早くなる。したがって、核磁気緩和の時間を見ることにより、物質が自制を持つかどうかを判別することができる。

光吸収

概要

光吸収とは半導体や金属の光学応答を観測することにより、電子のエネルギー構造を理解するものである。光吸収の実験を行うことで半導体のエネルギーギャップを算出することができる。

半導体・絶縁体の光吸収

半導体・絶縁体においては価電子帯(valence band)に電子が占められており、伝導帯(conduction band)には電子がいない。価電子帯と伝導帯の間を禁制帯といい、禁制帯のエネルギー幅をエネルギーギャップという。価電子帯の電子にエネルギーギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると電子が励起され、伝導帯に遷移する。このエネルギー吸収を基礎吸収、固有吸収という。このときに吸収される光の色を波長毎エネルギーに換算して考えることによりエネルギーギャップを光学的に求めることができる。また、金属の光学測定を行うことによって金属のプラズマ振動数を測定できる。

直接遷移・間接遷移

電子が価電子帯から伝導帯に遷移する際、波数ベクトルが等しい準位間で遷移することを直接遷移、異なる準位間で遷移することを間接遷移という。バンド図において、価電子帯の頂点と伝導帯の底が同じ波数ベクトルにある場合、この物質は直接遷移型と呼ばれる。反対に価電子帯の頂点と伝導帯の底が異なるベクトルにある場合、この物質は間接遷移型と呼ばれる。

プラズマ振動数

金属に白色光を照射すると周波数\(\omega_{\rm{p}}\)以下の振動数の光を反射し、\(\omega_{\rm{p}}\)以上の振動数の光を金属内に侵入させる。この\(\omega_{\rm{p}}\)をプラズマ振動数といい、金属の反射光の色を決定している。\(\omega_{\rm{p}}\)は以下の式で表される。
$$\omega_{\rm{p}}=\sqrt{\frac{Ne^2}{m\varepsilon_0}}$$

(発展)相対論効果

前項でプラズマ振動数が
$$\omega_{\rm{p}}=\sqrt{\frac{Ne^2}{m\varepsilon_0}}$$
で表されるとわかった。この式から電子密度\(N\)が大きくなる(=原子番号が大きくなる)ほどプラズマ振動数は高くなり、例えば銀\(\rm{Ag}\)においては可視光線を吸収することなくすべて反射するために銀色に見えるのであった。では、銀よりも電子密度の高い金\(\rm{Au}\)について考えてみよう。金の場合、銀より電子密度が高いために、銀と同様に可視光線を吸収せずに反射し、銀色に見えるはずである。しかしながら金の色は銀色とは明らかに異なる黄色がかった光沢色である。これはどういうことであろうか。
これは相対論効果を考えることで解決できる。金は原子番号が大きく原子核の電荷が大きいために、内殻電子がCoulomb力によって強く束縛される。これにより電子の運動速度が光速に近くなり、特殊相対論から来る電子の有効質量の増加が起こる。これによって\(\omega_{\rm{p}}\)の分母の有効質量項が効いてきて\(\omega_{\rm{p}}\)が相対論効果を考えない場合と比べて低くなり、可視光線の高エネルギー側が吸収され、金色になる。

DSC測定

概要

DSC測定とは、物質の相転移時に起こる熱異常を測定することで相転移に伴うエントロピー変化やエンタルピー変化を測定することができる測定である。

相転移の種類

相転移は比熱のとびかたによって1次相転移と2次相転移に分類することができる。1次相転移においては比熱が無限大に発散し、2次相転移においては比熱が不連続に変化する。

DSC測定

参照試料と測定試料を用意し、同じ熱量を与える。ここで測定試料に流れ込む熱量と参照試料に流れ込む熱量の差を計測する。これをDSC測定という。このとき参照試料は測定試料が相転移を起こす温度域において熱異常をおこさず、かつ通常の温度域において熱流量が近しいものを使用する。

強誘電体

概要

強誘電体とは、ある温度域において強誘電性を持つ物質のことを言う。強誘電体はその履歴性などからさまざまなデバイスに応用されている。たとえば、強誘電体の分極の履歴性から不揮発性メモリとしての応用がある(FeRAM)。

強誘電体

強誘電体とは、自発分極を持つ物質のことである。この分極は外部から一定以上の電場を受けることにより、自発分極の方向を反転させることができる。また、強誘電体はCurie温度において強誘電-常誘電相転移を起こす。この時、常誘電相においては自発分極は消失する。自発分極が消失した状態で高温から低温へとCurie温度をまたぐように温度変化をさせるとCurie温度において強誘電相へと相転移し、自発分極が現れる。

ヒステリシス(履歴性)

強誘電体は外場によってその自発分極を反転させることができる。ここである強誘電体を考える。この強誘電体に外部から電場を印加することにより、自発分極を反転させたい。ここで電場をある一定以上印加しないと自発分極は反転しない。これは系のエネルギーの極小値が原点を中心に対照的に配置されているからであり、分極を反転させるにはこの原点付近のエネルギーの障壁を超えるだけの冷気エネルギーが必要である。このとき、電場をかけても分極が反転しないことから、この強誘電体は履歴性を持つ(分極の向きをそのままにしようとする保持力がある)といえる。
同じ強誘電体であっても単結晶と多結晶で履歴曲線の形状が違うことが知られている。これは多結晶のドメイン構造によるものである。単結晶とは普通、単位格子が規則的に配列した結晶のことを指す。この場合、単位格子当たりの分極も規則正しく配列しており、電場に対して一斉に同方向に応答できるものと考えられる。一方多結晶とは普通、ある程度の大きさの単結晶がばらばらに結合ているものを指す。この場合分極は整列しておらず、自発分極は多結晶の部分部分で異なっていることが考えられる。これらの違いにより、単結晶では履歴曲線はより角ばった形に、多結晶ではより丸みを帯びた形になる。

Curie-Weiss則

常誘電相における誘電率は以下の式で表されるCurie-Weiss則に従う。
$$\varepsilon=\varepsilon_{\infty}+\frac{C}{T-T_0}$$
ここで\(T_0\)は外挿Curie温度である。この\(T_0\)は、強誘電-常誘電相転移が1次である場合は\(T_{\rm{C}}>{T_0}\)となり、2次である場合は\(T_{\rm{C}}=T_0\)となる。

熱電対

概要

熱電対とは熱電効果を用いて温度を測定するためのセンサーの一種である。異なる金属を接触させて温度差を生じさせると金属間のエネルギーバンド構造の違いから、電圧が生じる。この電圧差は接合させる金属の種類によって変化する。熱電対は温度計などに応用利用されている。

熱電効果

熱電効果とは熱を電気に変換することのできる効果である。おもにSeebeck効果、Peltier効果、Thomson効果などがある。熱電対はSeebeck効果によって電位差を熱に変換する。Seebeck効果によって熱が電位差に変換され、その電圧値を読むことによってその温度を知ることができる。

Seebeck効果

Seebeck効果とは、熱電効果の一種である。ある物質に温度差\(\Delta{T}\)を与えるとその温度勾配に沿った熱起電力\(\Delta{V}\)が生まれる。ここでFermi分布関数を考える。十分低温の場合のFermi分布関数は\(\varepsilon=\mu\)付近において角張っており、高エネルギー側に電子の分布が小さい。一方十分高温においては、Fermi分布関数は高エネルギー側の分布が大きくなる。この分布の差から温度差によって電位差が生まれる。ここでSeebeck係数\(S\)は
$$\Delta{V}=S\Delta{T}$$
によって定義される。

半導体

概要

半導体とは、金属と違いキャリアが少ない物質のことを言う。また、温度変化などの系の変化によってキャリア数が増減する。半導体はダイオード・トランジスタなどの回路素子に使われるために現代のデバイス光学において最も重要なもののひとつである。

半導体の種類

半導体は不純物の有無によって2種類に分けることができる。不純物の入っていない半導体のことを真性半導体といい、不純物が添加されている半導体を不純物半導体という。
真性半導体にはSiなどの例がある。Siは室温で\(1\,{\rm{eV}}\)程度のバンドギャップを持ち、このエネルギーと同じ分だけの熱や光のエネルギーによって価電子帯から電子が励起されて伝導性を発現する。
不純物半導体とはSiなどの真性半導体にBやPなどの周期表で隣の族の元素を置換することで、電子やホールがドープされることによって伝導性を発現する。
不純物半導体にはp型半導体(positive)、n型半導体(negative)に二分できる。p型半導体のキャリアはホールであり、n型半導体のキャリアは電子である。一般にキャリアの移動度は電子のほうが大きい。
キャリアの種類はホール効果におけるホール電圧の正負によって判別できる。

ホール効果

半導体に電場と磁場を印加すると半導体中のキャリアにLorentz力が加わる。この時、Lorentz力によって電子の密度分布が発生し、電場と磁場両方に垂直な方向に電位差が生じる。この電位差をホール電圧といい、この効果をホール効果と呼ぶ。
板状の半導体を考える。この半導体に垂直上向きに磁場を印加する。さらに\(x\)軸正方向に電場を印加する。この時、半導体のキャリアがホールであるならば、ホールがLorentz力によって\(y\)軸負の方向に集まり、\(y\)方向に正の電場が生じる。反対に、キャリアが電子であった場合、電子がLorentz力を受けて\(y\)軸負方向に電子が集まり、結果的に\(y\)軸負方向に電場が生じる。
式で表せば
$$E_y=R\boldsymbol{B\times{J}}$$
となる。ここで\(R\)はホール定数であり、\(R<0\)ならばキャリアは電子、\(R>0\)ならばキャリアはホールといえる。

(発展)半導体と金属のホール効果の違い

金属は半導体よりもキャリア密度が高いために、ホール測定を行うとホール電圧は微弱なものになってしまう。なので金属におけるホール測定は難しい。
また、金属におけるホール効果として異常ホール効果がある。強磁性体などの磁化をもつ金属に電場をかけると、磁場をかけていないにもかかわらず、ホール電流が流れる。これを以上ホール効果という。

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